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造園家の言葉とエクスペリエンス・デザイン

造園家の北山安夫さんという方が テレビで次のようなことを言っていました。

「実は庭は造ることより管理することの方が重要」

造ってすぐに名園になることはなく、 長い時間をかけて管理し続けることで名園になるそうです。 地道に草むしりをしないと美しい庭にはならないし、 樹木の枝をこまめに切っていくことで、 長期スパンで理想の樹木の形を造っていく。

この庭造りへの考え方を客観的にまとめると以下のようになると思います。

庭は常にベータ版

例えば、最近iOSが10にアップデートされたようにiOSには「完成」という概念はない。 これはWindowsもAndroidも同じ。 そして、庭も同じだと考えられます。 季節や天候、歳月に応じて、柔軟に庭が最適化され、アップデートされていくイメージ。

ただし、OSやアプリ、Webのアップデートが庭と違うのは、 アップデートする要因が、 時代の変化、市場の変化、ユーザー心理の変化など、 目に見えないものだという点です。 庭はアップデートしないと目に見えて劣化していきますが、 OSやアプリ、Webはデジタルデータなので目に見えて劣化しない。 常に「目に見えないもの」を見続けなければなりません。

圧倒的な長期的ビジョン

先ほどの樹木に対する考え方にもあるように 庭は圧倒的に長期スパンで物事をとらえています。 場合によっては何百年単位ですね。 ビジョンとしては何千年、何万年単位かもしれません。 Webで一部見られる「LP」のように消費物としてとらえることはありません。

庭というプラットフォームを造ったら、 それをベースにものすごい長期スパンで持続的にアップデートしていく。 時代によってはライトアップなど最新の機能を追加していく。 この圧倒的な長期的視野は学ぶべきものがあると思います。

庭は「モノ」ではない

この圧倒的な長期的ビジョンを可能にしているのは 庭という「モノ」を造っているのではなく、 庭という「体験」を造っているという 一貫したスタンスがあるからではないでしょうか。 これはあくまで想像ですが、 庭にあるすべてのパーツを全取り換えしたとしても 「庭という体験」が失われることはない。 「モノ」ではなく「体験」を造っているからです。 パーツなど「モノ」にフォーカスして造ってしまうと、 それが劣化して使い物にならなくなると庭そのものが崩壊してしまう。

体験のデザインは持続可能性が高い

こうして見ていくと「体験のデザイン」は持続可能性が高いと言えると思います。 万が一、モノとしてのパーツが劣化しても 「体験」自体は生き続けるんですね。 Webデザインに置き換えてみると、 グラフィックにフォーカスしすぎたデザインは 時代性やユーザー心理に対して劣化しやすく持続性が低いので、消費物して扱われやすい。 長期的な視野でビジネスを考えるのなら、 モノ性はできる限り消して、体験にフォーカスすべきですね。

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